
資源は都市にあふれている!?大林組は「資源循環」の鍵となるリユース・リサイクルでサステナブルな世界をつくる

新築の建物をつくるためには、鉄やコンクリートなどの資材を購入します。新しい鉄骨やコンクリートを製造するときには大量の二酸化炭素(CO2)を排出してしまいます。
しかし、資材を新たに購入することなく、解体した建物から鉄やコンクリートを取り出し、それを資材として新築の建物をつくるとしたらどうでしょう?
この方法が実現すれば、資材を製造するためのCO2排出量は大幅に削減でき、カーボンニュートラルの実現にも貢献できるでしょう。
解体した建物から新しい建物をつくる。そんなことが可能なのでしょうか?
大林組では、大林組技術研究所内の実験棟「オープンラボ3(OL3)」新築工事において、溶解や破砕などによってリサイクルされた建材を使用するだけでなく、リユース資材の先進的な使い方に取り組んでいます。既存の実験棟を解体して取り出した鉄骨の柱や梁などの骨組み、コンクリート基礎などの構造部材を、そのまま新築建物の構造体にリユース。また、大阪・関西万博で使用された設備・建材をはじめ、既存建物由来以外の資材についても幅広く活用しています。
このように建物の資材をリユース、リサイクルして活用し、廃棄物を最小限に抑えながら新たな建物をつくる取り組みは、建設業界における「資源循環」の一つといえます。
今回の記事では、カーボンニュートラルにも寄与し、サステナブルな社会の実現に貢献する「資源循環」の取り組みについてご紹介いたします。
INDEX
大阪・関西万博「ノモの国」パビリオンでは99%を再利用・再資源化!
こうした「資源循環」の取り組みの一つが、2025年大阪・関西万博のパナソニックグループパビリオン「ノモの国」です。大林組はパビリオン建設に携わりました。
「ノモの国」の建築において、「3つの循環で生まれるパビリオン」がテーマに掲げられ、使用済みの家電から回収したリサイクル材料や工場から出る端材・廃材をもとに生成した建材や照明、パナソニックグループが開発した廃材を使った製品が積極的に活用されました。
建設時に資源循環型のパビリオンとして考慮された「ノモの国」は、万博閉幕後に丁寧に解体され、パナソニックグループ製品の材料としてリサイクルされたり、建材としてリユースされたりしました。その建材の一部は、建設中の「オープンラボ3(OL3)」にもリユースされています。
パビリオン建築に使用されていたリサイクル鉄や銅、ファサードフレーム、外構の舗装ブロックなどの建材の再利用・再資源化を徹底し、廃棄物の最小化が図られています。さまざまな取り組みにより、「ノモの国」パビリオンは、建築物における99%(※1)以上のリユース・リサイクル率および廃棄率1%未満を実現しています。
※1 展示物を除く建築物(コンクリート、鉄、廃プラスチック、外壁、混合廃棄物、石膏ボード、外構など)を重量ベースで算出大阪・関西万博 パナソニックグループパビリオン『ノモの国』の設備機器、建材を大林組技術研究所実験棟にリユース | ニュース | 大林組
建物の「資源循環」とは
資源を持続可能な形で利用できる社会の構築は、世界共通の目標です。
建設業界は、資源消費量と廃棄物発生量が非常に多い産業の一つといわれています。産業廃棄物全体における建設廃棄物の割合も高いため、資源の有効活用や廃棄物削減を通じた環境負荷の軽減は建設業界が取り組むべき喫緊の課題です。
大林組では、サプライチェーン全体で脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めるとともに、資源をできるだけ長く使い続け、廃棄物を出さないサーキュラーエコノミーの考え方に基づく循環型社会の実現を目指しています。さらに大林組は建設独自の取り組みとして「サーキュラーコンストラクション®」を掲げています。
サーキュラーコンストラクション®(Circular Construction)とは
建設業界における廃棄物の削減と資源の有効活用を目指す循環型の建設システムのことで、解体した後の廃棄物を「資源」と捉え直し、リユース材として再利用し、リユースできないものはリサイクル(再資源化)して利活用することです。資源の有効活用と資源生産時のCO2排出量削減など環境課題の解決を両立させます。
サーキュラーコンストラクション®の実現のためには3Rを考慮した取り組みが必要です。
3Rとは
3Rとは、Reduce:リデュース(廃棄物の発生抑制)、Reuse:リユース(再使用)、Recycle:リサイクル(再資源化)という3つの単語の頭文字をとったもので、「ごみ削減」「繰り返しの使用」「資源の有効活用」といった環境と経済が両立する循環型社会を形成していくための3つの取り組みです。 (出典:リデュース・リユース・リサイクル推進協議会ウェブサイト、経済産業省「3R政策ホーム」ウェブサイト)
これをサーキュラーコンストラクション®に当てはめると以下のようになります。
Reduce:リデュース(廃棄物の発生抑制)
建設資材の使用量を削減し、余分な資材をつくらないことで、廃棄物の発生を最小限に抑える
Reuse:リユース(再使用)
建設資材を繰り返し使用することで、新たな資材の製造を減らす
Recycle:リサイクル(再資源化)
建設廃棄物を再資源化し、新たな建設資材として活用する
「資源循環」がもたらすカーボンニュートラル
建物の資源循環は、脱炭素社会の実現にも貢献します。では、どのような方法でCO2を削減できるのかをご紹介します。
鉄骨のリサイクル
そもそも、新築の建物で鉄骨が必要な場合、従来は「高炉」によって鉄鉱石などの天然資源をコークスを用いて溶かし、ゼロから鉄をつくります。この製造工程では、CO2がたくさん排出されています。
一方、「電炉」は廃材を溶かして鉄をリサイクルする方法です。鉄のスクラップを電気で溶かして鋼材を生産するこの製造方法は、「高炉」に比べてCO2の排出量が抑えられます。
つまり、電炉によってつくられたリサイクル鉄を原料とする鉄骨を使う割合が増えれば増えるほどCO2排出量削減に貢献できるのです。
最近では、電炉で生産する鉄骨の品質も向上したため、大林組では電炉鉄骨を年間10万t使用しようという目標を立てています。
鉄骨のリユース
さらに、解体した建物の鉄骨をそのまま再利用できれば、新しい材料を調達する必要もなくなります。同時にスクラップにする鉄を最小限に抑えることも可能です。
もちろん、鉄製造時のCO2も発生しません。
コンクリートもリユースできる
コンクリートもリユースできれば、コンクリート製造時に発生するCO2を大幅に削減できます。
長い年月において使用されたコンクリートは、大気や雨、風にさらされることで中性化が進み強度も低下していきます。そこで大林組は、この中性化や強度の検査を行って問題がないものであれば、リユースが可能ではないかと考えました。
国内初!大林組は建物解体後の構造部材を新築建物にリユース
ではここで、国内初の取り組みである、建物解体後の鉄骨やコンクリート製の構造部材を構造体にリユースする「オープンラボ3(OL3)」新築工事について詳しく解説します。
1993年に完成した電磁環境実験棟の古い建材を用いて、建物の骨格となる構造架構から外装や内装、用途などが全く異なる建物として新たな命を吹き込む前代未聞の試みです。
解体する実験棟の柱・梁・ブレースなどの鉄骨部材を取り出し、新築建物に合わせて切断などの加工を行ったうえで、再び構造体として使用します。
さらに、基礎・基礎梁・床などのコンクリート構造部材についても、新築建物の平面形状に合わせて切断後、接合部を加工し、現場で新材と接合するなど、新たな建物の構造体としてリユースします。この方法によって、スパンの変更も可能になるため、より自由度が高い、構造部材の有効活用が実現します。
【動画で見るカーボンニュートラル】大林組技術研究所オープンラボ3 構造躯体のリユース
リユース材を活用することで、新材を使用した場合に比べ、部材製造時におけるCO2排出量を抑えることができます。
オープンラボ3(OL3)の構造部材のうち鉄骨57%、コンクリート33%で、解体建物のリユース材を使用。構造部材製造に伴うCO2排出量は、全ての資材を新たに調達する場合に比べ約49%の削減を達成しました。
さらに、冒頭で紹介したように、オープンラボ3(OL3)は、大阪・関西万博のパナソニックグループパビリオン「ノモの国」の設備機器や建材などの約30品目180点をリユースする予定です。リユースした資材は、タイルカーペットなどの内装材、舗装ブロック、ウッドデッキなどの外構材、照明器具、スピーカー、コンセントスイッチなどの電気設備、制気口などの空調換気設備、水栓、衛生陶器などの衛生設備など多岐にわたります。
一方で、今回のオープンラボ3(OL3)の計画では建築確認申請と構造適合性判定の審査を受け、建築基準法に適合することも確認しています。また、断熱性能、高効率化設備と太陽光発電などにより、ZEB達成を目指しています。
ZEB (Net Zero Energy Building)ってなに? 「使うエネルギー」と「つくるエネルギー」を差し引きゼロにする建築物とは?
建物の資源循環がもたらす豊かな未来
大林組は、オープンラボ3(OL3)のように、建物の「資源循環」を実現するため、リユース材の品質管理の高度化や、構造部材の再利用をより信頼性の高いものとする体制づくりを進めています。まだ解決すべき課題はありますが、実用化が進めば、資材調達時におけるCO2排出量の削減や構造部材の再利用による設計時の自由なプラン、レイアウトが実現できることや、別の場所への移築も可能になることで建物の長寿命化にも寄与します。
例えば工場の場合、製造ラインを変更すると工場そのものの形を変える必要があります。そのようなレイアウト変更が必要になる工場や倉庫、大型商業施設などへの活用の幅も広がります。
さらに、解体作業は資材を丁寧に取り出す必要があるため、解体現場近隣への騒音や振動も低減される場合もあります。
資材のデータプラットフォームを活用し、資材情報の可視化を進める
建物は建設資材の集合体であることから、建物解体現場はリユースやリサイクル可能な資材の供給源といえます。大林組では、建設資材のリサイクルのみならず内装材や設備機器のリユースのためのマッチングや環境指標の数値データとして可視化する資源循環データプラットフォーム「Upcyclea(※2)」を実証導入し、建設資材の循環利用を進めています。
仏 資源循環データプラットフォーム「myUpcyclea」を活用し、建設資材の循環利用推進に向けた取り組みを開始 | ニュース | 大林組
※2 2025年4月以降に「myUpcyclea」から「Upcyclea」に名称変更都市は多くの建物であふれています。「つくって、使って、廃棄する」を繰り返し、都市は成長してきました。
「資源循環」によって、建物そのものが資源になります。これらが資源となって新たな建物がつくられる。このような循環が選択肢の一つとなる未来は、私たちの生活に豊かさをもたらし、新しい価値を生むのではないでしょうか。
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